書籍紹介

【書籍紹介】「悩まない人」の考え方

「悩まない人」の考え方(著:木下勝寿)

著者の木下勝寿さんは、ここ20年以上、まともに悩んでいないというそうです。これは、決して人生が順調だったからでも、ポジティブシンカーであるからでも、強靭なメンタルがあるからでもなく、悩まない「思考アルゴリズム」を身に着けていたからでした。この本では、その思考アルゴリズムを、誰にでも理解して実践していけるように、具体例とともに詳しく書かれています。

ここでは、本書に書かれている内容のうち、より重要・実践的だと感じた概念・考え方をピックアップして、紹介・説明をしていきます。(文字の色を変えているところは、本書に書かれている内容に対する私の見解です)

何も考えていないバカではなく、悩みから自由な賢人になる

冒頭に書かれている言葉で、メッセージ性の強さを感じます。考えた上で悩まない。問題に直面した時に、悩まない思考アルゴリズムを適用させるだけ。そもそも悩みという状態が生じない。決して、ポジティブシンカーでも、強靭なメンタルがあるわけではない。

悩みや考え事から目を背ける訳ではなく、真正面から考えた上で悩んでいない、という状態であることが重要なように感じられます。

悩んでいる状態とは?

悩みの定義: いま直面している問題に対してなす術がなく身動きが取れない、一種の思考停止状態

つまり、問題に対して思考を巡らせれば、悩む状態にはなり得ないということです。では、具体的にどのように考え、どんな状態になれば良いのか?本書では、「問題は解決しなくても良い」と説明されています。問題を「解消」する3つの方法は、以下の通りです。
・問題を解決する(そもそもこれができれば困らないが)
・問題を問題でなくする
・問題を具体的な課題に昇華する

「うまく行かない」と「思い通りに行かない」

この両者は違う。大抵の場合は「思い通りに行かない」だけ、予定していたルートでゴールに辿り着けないということに過ぎない。なら、別の方法を試せば良い。「うまく行かない」とは、ゴールそのものが無くなるというレベルの状態。

思い通りに行かない状態を脱するための手段が、いくつか紹介されていました。

10回に1回の法則

いきなり1つの方法で成功することはない。できるだけ早く9回の失敗要因を積み重ねて、初めて1回成功する。1回失敗したところで思考停止しない。とにかく多くのテレビ番組に出演し、ヒットするまで数を打つという島田紳助さんの話が例に上がっていました。
ここで重要なのが、手段・作戦を複数用意すること。作戦A(成功率50%)を実施し、作戦B(成功率30%),C(成功率20%)も並行して思案しておく。作戦Aが失敗したら、残りの作戦を実行する。この時、失敗した作戦Aを補うように作戦D,Eを新たに思案する。このようにして、「常に成功率合計100%をキープ」すれば、いずれは絶対に成功する。

確かに、今直面している問題に対し、1つの作戦だけで成功すれば苦労はしないですね。どんなことに対しても言える考え方のように思えました。手早く失敗することが成功への近道と知っていれば、自分から失敗しに行けるし、失敗をむしろワクワクすることと感じられるようです。

最終目的逆算思考

「原因解消思考」↔︎「最終目的逆算思考」
前者は問題の原因を調査して取り除くこと、後者は「結局、何がどうなったら良いか?」を考えること。目の前の問題だけにフォーカスせずに、広い視野を持つことで、新たな次の一手が見えてくる場合があります。
「ある場所まで行くことが目的だが、目の前に大きな岩があって道路が通れない」、という問題があったとき、岩をどかすことに注目せずに最終目的を考えれば、ヘリコプターを使うといった選択肢も見えてくる、といった例が紹介されていました。

問題を問題でなくする

問題そのものを消し去る、リフレーミングと呼ばれる方法。物事の捉え方を変えることで、8-9割の問題は「問題でなくなる」。
悩みは「外部・出来事・事実」でなく、「内部・解釈・感情」から生じる。外部を変えることは至難の業であり、自分の捉え方に焦点を当てれば解消する、0秒で実践できる。

ここで重要なのが、自分の感情にはフォーカスせず、外部・出来事・事実を思考すること。特に、不快な感情が大きいほど、ひどい経験ほど、悩みかけている自分に気付きやすいはず。「感情モード」から「思考モード」に切り替え、不快な感情の原因を思考する。日頃から自分の感情を観察することこそ、悩まないための重要な方法。

「感情モード」と「思考モード」の切替えについては、こちらの記事で更に深堀りしています。
心のサーモスタット【「悩まない人」の考え方】|WTR.DYNAMICS

悪い人間はいない、悪い関係性があるだけ

全ての悩みは人間関係とも言われているが、人間そのものが悪いわけでなく、その人との間に悪い関係性があるだけ。「相手が変わるべき」、と思うのでなく、関係性を変える、即ち「自分を変える」のが手っ取り早い。誰が悪いかなどはどうでもいい。他人にも事情があるかもしれない、と考えると、不快な感情は和らぐ。

できない、つまらないは存在しない

できないことはない、やらないと決めている自分がいるだけ。
つまらないことはない、それを楽しむスキルがないだけ。

全部自責思考

「他自責混在思考」↔︎「全部自責思考」
悩まない人は、全責任は自分にある、という「全部自責思考」で考える。ここで、「責任を取る」とは「問題を解決」という意味で、決して罰を受けるという意味ではない。まずは全部自責だと捉え、自分には責任を取れると解釈する。ただし、実際に責任を取るかどうかは自分で決める。自分が責任を取れる範囲を広げることが、即ち成長を意味する。

「雨が降っても自分のせい」という、パナソニック創業者の松下幸之助さんの言葉がありますが、彼は人工的に気象を操れるようなシステムを作った訳ではありません。この思考法を一言で表現できる、とても印象的な言葉に思えます。

悩みから脱する最強の思考法

「佐藤くんと西山さん」、という人物のやり取りで表現されていました。
1.「お前、悩んでんのか?」→「はい、悩んでいます。」
2.「何を悩んでんねん?」→「〇〇が××ということがあって…」
3.「結局、何がどうなったらええねん?」→「〇〇が、△△になったら良いのですが…」
4.「そのためには、何をせなあかんのか?」→「◻︎◻︎を、※※にしないといけないですね。」
5.「ほな、それやれや。」→「はい、やります!!」

1.悩んでいる自分の自覚

何か不快な感情、ネガティブな感情を感じ取った時こそ、悩もうとしている瞬間。悩んでいる自分を自覚する。

2.不快な感情の原因を思考

そこで頭を感情モードから思考モードに切り替えて、不快な感情の原因を思考する。感情で判断せず、客観的な事実に目を向ける。心のサーモスタットを作動させる。

3.最終目的に立ち返る

これまでできていたことができなくなった時は原因解消思考が役立つが、未知の問題に対しては最終目的逆算思考が役立つ。

4.具体的な課題への昇華

次なる一手を導く。すぐに次の一手が見つからない場合は、他人の成功例に学ぶ、まず調べるという行動をする。

全ての悩みは1時間集中で消える

悩みたくないなら、書く一択。脳内でダラダラ考えず、書きながら1時間集中して考える。このとき、「佐藤くんと西山さん」のやり取りを思い出し、思考モードで考え、具体的な課題に昇華させる。
これはできるだけすぐに行うと良い、すぐに行えない場合は、自分のスケジュールに1時間の時間を確保して行う。

これは私も昔から意識して行っていました。悩んだ際や考え込みそうな際に、それをアウトプットする専用のノートを用意しています。これをやれば必ず次の一手が見えてきます。

最悪を、確率論的に定量的に想定する

確率論的な期待値としてリスクを想定すると、取れる行動、取れない行動がわかる。そのうえで、最悪の未来についてもじっくり考え、その最悪に耐えられると判断したときに初めて、物事に着手できる。このように考えれば、感情ベースで物事を悩む余地が無い。

ラッキー大喜利

決してポジティブ思考ではなく、「思考グセ」としてのラッキー。
とりあえず、ラッキー!と思う。そこから、何がラッキーなんだろう?を後付けで考える。ここでも、感情にタッチせず思考する。このとき、何がラッキーなのか思いつかなくても問題ない。ラッキーに転換することで、トラブルや困難そのものが「自分を前に進ませてくれる原動力」になる。

おわりに

この本は、私が読書をしてみようかな?と思い始めた時に読んだ本でした。読書が趣味になる前は、「自分には長い文章を読めない」「読んでも理解できそうにないし頭に残らない」と思い込んでいましたが、それは単に「やらない自分がいた」だけでした。いざ読んでみると、信じられないペースで読み進めることができ、その内容を考えながら楽しんでいました。今のところ、本書は自分の中で最高の1冊です。あらゆる場面で使える革新的な思考法が凝縮されているように思えます。もちろん、全ての内容を全て真に受け本書や著者を「信仰」するわけでなありませんが、自分にも取り入れてみようと思ったところは自分なりに咀嚼して「インストール」しています。私はまだまだ著者のような「悩まない人」には程遠いですが、「悩まない人」の思考アルゴリズムを学べたおかげで、「”比較的”悩まない人」くらいにはなれるのではないかと思っています。

思考法に関する本は、精神科医やカウンセラーなどが書かれているものが多いですが、この本の著者の木下さんは東証プライム上場企業の社長というのも意外性があります。そのせいか、説明の論理性が高く、章の構成がわかりやすく読みやすい印象がありました。セクションが全30個ありますが、1つ1つのセクションのボリュームは少ないので、内容が頭に残りやすいです。しかも、それぞれのセクションの内容の繋がりもあり、本書で紹介されている思考法を組合わせて考えることで、より理解が深まる場面も多かったです。読書初心者にも十分おすすめできます。

本書には、ここでは紹介しきれない思考法も数多く書かれており、ここで紹介した思考法も具体例とともにより詳しく書かれています。私があまり気に留まらなかったセクションも、私の同居人が見たら面白そう!とコメントしたりもしていたので、人によってどこに魅力を感じるかは変わるのかもしれません。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
「悩まない人」の考え方 ── 1日1つインストールする一生悩まない最強スキル30 | 木下勝寿 |本 | 通販 | Amazon

PIVOTのYoutubeチャンネルで、著者の木下勝寿さんが本書を紹介していました。こちらもわかりやすくまとめられているのでご参考までに。
悩まない思考法/悩む時間はムダ/問題をなくす3つの方法/悩みを課題に昇華する5ステップ/「10回に1回」の法則/ラッキー大喜利/悩みは自分から生まれる/どんな悩みも「1時間集中」で消える【木下勝寿】